その他の情報
カシスは、クロスグリ(黒酸塊、別名クロフサスグリ、英名ブラックカラント)と呼ばれる植物です。小さな食用の果実をつける、温帯性の落葉低木です。
果実は黒に近い濃紫色で、ビタミンCやアントシアニンが豊富です。他のスグリの仲間と同じく、スグリ科スグリ属に分類されます。
カシスの世界最大の産地はポーランドです。毎年10万トンから14万5千トンの収穫高があり、これは世界全体の収穫高の約半分を占めます。
ポーランドは同時に輸出高でも世界最大です。またポーランドは、品種改良も盛んで、頻繁に新品種を生み出しています。
日本では青森県青森市が国内最大の産地となっています。
アメリカ合衆国では、19世紀まではクロスグリが広く栽培されていました。しかし、「五葉マツ類発疹さび病」の原因菌の中間宿主になるということで、栽培は禁止されました。
「五葉マツ類発疹さび病」は、1900年代にアジアからヨーロッパ経由で侵入して、抵抗性のないアメリカ大陸のマツ類に、壊滅的被害を出し続けています。
クロスグリの実はかすかな苦味をもち、ゼリー、ジャム、アイスクリーム、コーディアル、リキュールなどに利用されます。イギリス、ヨーロッパ、イギリス連邦諸国では、クロスグリの風味を加えたり、干した果実を加えたクッキーなどの菓子が多数存在します。
酒場では、クロスグリのコーディアルは単に「ブラック」と呼ばれます。例えば、「ウォッカ・アンド・ブラック」「スネークバイト・アンド・ブラック」「ペルノー・アンド・ブラック」「ブラック・アンド・レモネード」などです。
北アメリカでは、クロスグリのコーディアルを「クレーム・ド・カシス」と呼びます。
イギリスやフランスでは、「キール」などで用いるクロスグリのリキュールを「クレーム・ド・カシス」と呼びます。
オランダでは、赤い色のクロスグリ味のソフトドリンクをカシスと呼びます。
アガサ・クリスティの創作したベルギー人の名探偵エルキュール・ポアロは、しばしばクロスグリのシロップを飲んでいます。
「クレーム・ド・カシス」は、カシスを原料とした、甘味の強い深紫色のリキュールです。
カシスは、収穫してから24時間以内にリキュールの製造に持ち込まれ、−30°Cで保存され、中性スピリッツ中で破砕されたあとは、−5°Cでおよそ5週間かけて浸出されます。最後に砂糖を加えて果実の酸味と甘味のバランスをとり、ろ過すれば完成します。
「クレーム・ド・カシス」は、蒸留を経ていないリキュールで、温度変化や酸化に弱い特徴を持ちます。